かつて銀塩マニュアル一眼レフにも小型化ブームがあった。
火付け役はオリンパスOM-1である。
OM-1は故・米谷氏が一眼レフの3悪にメスを入れた傑作である。
一眼レフの3悪・・・・・「大きい、重い、ショックが大きい」
その後、小型化を得意とするペンタックスがマニュアル露出機としてOM-1より縦・横サイズとも若干縮めたMXを発売。若干なりともOM-1より小型化したのはペンタックスの意地だった。両機ともボディは小型であってもダイアルや巻き戻しクランクはむしろ大型化し、小型であっても操作性を犠牲にしないというコンセプトではあったが、実際ホールドしてみるとさすがに小さすぎて頼りないところがあったのも事実である。
そんな時代に、満を持してニコンからも小型機 FM が発売される。
それまではニコマートFTシリーズで廉価な巨漢機を誇っていたのに一気に小型化された。ここで注目すべきはFMは世界最小を追わなかったことである。あくまでも理想的な大きさを追求し、ホールド性、操作性、機動性のバランスを取ったところが素晴らしかった。
カメラの見た目以外にこのカメラが先見性という点で優れていたのは小型・縦走り金属幕シャッターを採用していたことである。初代FMはCOPAL製の最高速1/1000(X同調速1/125)のシャッターであったが、その後FM2で1/4000を実現する。あの銘機ニコンF2、F3でも布幕横走りシャッターであったので、そういう意味ではニコン社の中でもFMシリーズは高性能なカメラであったのだ。その後、FMシリーズはFE、FA等で自動化路線に走ったり、FM3Aではメカと電子のハイブリッド型シャッターへと進化してゆく。
私が高校生の時、熟考に熟考を重ねた結果、人生で初めて買ったカメラが ニコンFM だった。
理想的なバランスを持ち、精密機器としての持つ喜びも感じられ「金属感」も申し分ない。 銘機だと思う。