デジタル化が目指すものは何だろうか?超解像、伝送、安価、画像編集の容易さ、家電との融合などか。そんな時代の中で、アナログはある意味非常に贅沢なジャンルになっている。先の目的と逆行する、趣味性の高い世界と言える。アナログというノスタルジーへの安心感、憧れが心のどこかにある。
ライカを斜め正面から眺める。金属肌に具わった、光沢を放つ光学ファインダー、シャッターダイアルに刻まれたローレットの心地良さ。巻き上げレバーを回すと、パトローネに絡まった銀塩フィルムがフリクションを引きずりながらスプールに巻き取られて行く親指に残る鈍い感触。無機質なデジタル製品では味わえない贅沢がここにある。
一方腕時計の世界でも機械式時計は特に贅沢品と考えられている。価格が何百万円という商品も珍しくなくビジネスとして成り立っている。なぜか?デジタルの進化は速いが、素早いが故に新しい技術でもすぐ陳腐化する。機械式はどうか?何百年に渡り徐々に進化、工夫された完成形であればある程、普遍的で価値が高い。進化しないから陳腐化しないという訳である。
そういう意味ではライカM3は衝撃的な登場だった。バルナック型から徐々に進化したのでは無く、突然変異して頂点を極めてしまった。世に言う『M3ショック』である。ライカはM3以降は停滞、もしくは退化したと思われている。機械光学機器としては他に類を見ない系譜と言える。
これ以上進化しない、頂点を極めた製品を持つ喜びは何物にも代え難い贅沢である。デジタル製品では半年後あるいは数ヶ月後、新製品が登場してしまう。顧客は絶えず新しい商品を追い求めて疲れるか、割り切って諦めるしかない。
アナログはデジタル時代にあって、進化という時間を止めてくれる、心に癒しを与えてくれる、贅沢である。
アナログはデジタル時代にあって、進化という時間を止めてくれる、心に癒しを与えてくれる、贅沢である。